平成19年8月号
もの忘れについて
私のグチを聞いてください。実はですね、どうも最近忘れっぽくなってしまって、日常で困る場面がよくあるのです。くすりの処方は医者の大切な仕事のひとつですが、時にそのくすりの名前がなかなか思い出せないのです。「それではおくすりをお出ししますね。え〜と、あれあれ。あのくすり。何だったっけ。いつも出しているのにな・・・」 ほかにも人の名前を忘れたり、最近読んだ本のタイトルを忘れたり...。私が若い頃にはなかったことです。(ため息)
そもそも「記憶」には3つの段階があるとされています。まず1つめ。その瞬間に「覚える」ということ。例えば、親戚からの電話、ご近所の方に不幸、明日会う約束、テレビのニュースなど。見聞きしたことを頭の中に刻みこむ作業です。次に必要な作業は、今、覚えたことをしっかり「保つ」こと。わかりやすく言えば、覚えたことを頭の中にある「記憶の引き出し」に整理し、なくさずにキチンとしまっておくことです。これが上手にできないと、せっかく覚えたことが無駄になってしまいますね。さて最後の段階です。必要なときに「記憶の引き出し」にしまったものを間違いなく取り出すこと。午前中に親戚からきた電話の内容を家族に伝える、ご近所の方の不幸を町内会長さんに連絡する、明日人に会う約束をあとからメモ帳に記す、テレビのニュースの内容を夕食を食べながら話す、などなど。結局ですね、「もの忘れ」とはこれら3つの段階のいずれかがうまくいかないのです。ですから、先ほどくすりの名前が思いつかなかった私の場合では、3つめの段階、すなわち、頭の中にある記憶の引き出しにしまっておいたくすりの名前を取り出すことに失敗しているのです。「先生、あのくすりは○○ですよ」と看護師さんに言われ、「ああ、そうだった!」恥ずかしいやら悲しいやら・・・。
もの忘れには心配のないものと、ちょっとだけ心配したほうがよいものがあります。私の場合は良性のもの忘れで、心配いらないタイプです。思い出したときに「ああ、そうだ」と感じる場合は大丈夫。ちょっと心配したほうがよいケースは、せっかく覚えて頭の中にある記憶の引き出しにしまっておいたはずのものが、いつの間にか消えてしまうパターンです。この場合、最近の出来事や体験したことを忘れてしまいます。ただし、自分にとってあまり大切ではないことは忘れることが当たり前ですので正常です。また、もの忘れを自覚している間はそれほど心配するには及びません。 高齢化社会にともない認知症の方の総数は増えているようです。平成二年のデータによりますと、その頻度は六十五歳以降で百人に二〜三人、七十歳以降で百人に三〜四人、七十五歳以降で百人に七人、八十歳を超えますと六〜七人に一人と次第に増えていきます。記憶の検査はたいていの病院で実施可能です。もしご心配ならお気軽に相談されてみてはいかがでしょうか。
平成19年7月号
手洗いができていますか?
「手洗いとうがいを毎日ちゃんとしてくださいね」と私は外来で口ぐせのように言っています。手洗いとうがいの習慣は感冒症候群(かぜ)予防のためのみならず、手軽にできる健康維持法にもなると思います。実は手洗いにはキチンとしたやり方があるのですが、案外ご存じない方が多いのではないでしょうか。今回は正しい手洗いの仕方をテーマにお話ししようと思います。
私が医学生の頃、手のひらにはどんな種類の細菌がいるのかを調べてみたことがありますが、その結果には大変に驚かされました。一見すると、汚れもなくきれいに見える手ですが、実にさまざまな種類の細菌が住みついていることがわかったのです。(時にはウイルスもくっついているようです。)その細菌のすべてが病気を引き起こすタイプというわけではないのですが、学生なりに手洗いの習慣の大切さが身にしみたものでした。
ではこのような細菌やウイルスを洗い流すにはどのような手洗いが大切なのか調べてみました。いろいろな本を調べてみたのですが、若干の違いはよしとして、その共通するところを書いてみることにしましょう。(そうそう、手洗いのタイミングは基本的に、外から帰宅した時、食事の前、トイレの後の三つになりますので、覚えておいて下さい。)
1.まず手をよく水でぬらして石けんを泡立てる。2.5秒間両手の手のひらを力強くゴシゴシとこする。3.片方の手の甲をもう片方の手のひらで5秒間力強くゴシゴシとこする。(反対側も同様に5秒間)4.そのままの状態で両手の指を組み合わせて、指の付け根をこする。(5秒間)5.片方の手のひらにもう片方の指先をつけて、5秒間輪をえがくようにこする。(反対側も同じように5秒間)6.実は親指のつけ根、手の甲側が一番汚れが残りやすい所なのだそうです。親指を片方の手のひらに包み込んでゴシゴシこする。(これも5秒間。反対側も同じように)7.まだまだ終わりません。最後に手首をつかんで、5秒間ゴシゴシまわす。(反対側も同じように5秒間)8.最後に十分に水ですすいで、せっけんの泡を流し落とします。9.清潔な(←これが大切!)タオル、あるいはハンカチで手をふきます。不潔なタオルはせっかく洗った手を再び汚してしまいます。
最後にもう一度、要点をまとめましょう。一、私たちの手はきれいに見えても、細菌やウイルスがついています。二、正しい手洗いによって、それらを洗い流すことができます。三、手洗いは感染症予防の第一歩、基本中の基本。
食中毒の季節です。めんどうに思わずに実践を!
平成19年6月号
肥満について
今回は肥満をテーマにお話しします。成人病予防のためには、何よりもまず肥満を解消することが大切とされています。知り合いの小児科医に聞きますと、我が国では肥満の子供が年々増えていて、現在、肥満児は学童の約10人に1人の割合で見られ、その頻度は二十年前に比べると、男子で3倍、女子で2倍になっているそうです。肥満対策は子供たちの問題でもあるわけですね。
肥満の判定にはBMI(肥満指数=体重s÷身長m÷身長m)がよく用いられています。この数値が25以上を肥満と判定します。また、標準体重を計算して(計算式は身長m×身長m×22。例えば165pの人であれば1.65×1.65×22=59.9 s)、この標準体重を20%以上越える場合に肥満とします。
肥満は糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症などの成人病や胆石症、呼吸異常、腰痛、変形性膝関節症などをもたらします。ある調査では、肥満とともに死亡率が増加しており、例えば米国女性では、先ほどのBMIが27 以上で全死亡率が1.2〜1.5倍、心血管死が2〜4倍 になると言われています。体型も重要。上半身脂肪蓄積型(リンゴ型、腹部肥満)の方が、下半身脂肪蓄積型(洋なし型、ヒップ肥満)にくらべて合併症の発生率が高いことが知られています。
摂取するカロリーが、消費するカロリーより多い場合には当然肥満となりますが、このような食べすぎ・運動不足のほか、体質も肥満の原因と考えられます。(遺伝的因子(生まれつきの体の個性)と環境因子(日頃の生活習慣))
通常、肥満でない人は脂肪の蓄積量により食欲がうまく調節されています。つまり脂肪を蓄積する細胞である脂肪細胞から食欲をおさえるホルモンが分泌されているのです。近年、肥満者ではこの食欲抑制ホルモンがうまく働かなくなっていると考えられるようになりました。
最後に肥満治療の原則を述べておきます。1.食事のカロリー制限(特に脂肪成分を制限すること。)2.食習慣の改善(まとめ食い、ながら食い、夜食、間食、早食いなどは肥満を来しやすいので注意。)3.運動療法 (中程度の運動、例えば壮年者では1分間の脈拍が120程度になるような運動を毎日最低30分続けることが基本。もちろん主治医に相談の上で実施。)4.薬物療法(肥満を来すような病気が見つかった場合に。施設によっては食欲をわざと抑えるくすりを補助的に短期間使用することがあるそうです。)
以前より『肥満は食欲をコントロールしようとしない怠け心から起こる』とよく言われたものですが、これからはすべての方々が肥満についての医学的知識を正しく理解するべき時代になることでしょう。
平成19年5月号
脳卒中を予防しましょう
数年前に実施された国民生活基礎調査によると、寝たきりの原因となる病気の第一位は脳卒中(27.7%)、第二位は高齢による衰弱(16.1%)、第三位は骨折(11.6%)となっています。加えて、我が国において脳卒中は癌、心臓病に次ぐ、死亡原因の第三位を占める病気でもあります。私は日頃、寝たきり原因病の代表格である脳卒中の(再発)予防についての啓発活動を外来にて進めています。今回は東洋医学の視点から、脳卒中の予防について考えてみます。
中国では脳卒中を中風病と呼びます。東洋医学では身体と心のバランスをとても重視しており、病気にならない大原則として、「心をおだやかにすること」「伸び伸びとして心地よく愉快でいること」を挙げています。心の乱れが病気の主要原因と見るわけですね。中国に伝わる古書『黄帝内経』には「憤怒は気血を上逆させ、喜び過ぎると気がゆるみ散って制御できない、悲しみすぎると正気が消耗し気虚無力となり、恐れ過ぎると気は下に逃げ、驚きうろたえると気の流れが乱れ、あれこれ考え過ぎると正気は留まって通らない」と記述されています。強すぎる感情の刺激は健康によくないことを教えているのですね。特に中風病患者さんは血圧をコントロールするためにも、過激な情緒変化を避けねばいけません。悲観や失望、ゆううつ、怒りなどはの体に悪影響を及ぼし、中風病の再発を招きかねません。では、東洋医学の専門家がまとめた予防のポイントを述べていきます。
1.朝起きたら、ゆっくり動き始めること。特に持病のある人は起床後二時間はウォームアップすること。元気になる時間は午後三時頃と考えてよい。たそがれ時にも注意。2.秋・冬は中風病がおきやすい。十分に衣服を着用して寒を受けないこと。3.なるべく禁酒・禁煙して、日常生活を規則正しくすること。4.食事はあっさりしたものを、量は少なめに。脂肪分・脂っこいものはなるべく避け、塩辛いものも少しにして、新鮮な野菜や果物(糖尿病は除く)を多めにとる。アルミ製の炊事用具を使わず、化学調味料も避ける。5.便秘を防ぐこと。夏場は食生活に注意し下痢しないこと。6.血液の濃縮は危険。適度に水分を補給する。高齢の中風患者の神経は敏感性が低下しているので、のどが渇いたと感じた時にはすでに脱水状態。7.できるだけ薬の種類を少なくし、肝臓・腎臓の負担を軽減する。8.原発病(例えば高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病など)を治療すること。定期的に検査をして、経過をチェックする。
動脈硬化の進行しやすさは遺伝する傾向にあるように感じます。ご家族の中に中風病(脳卒中)の方がおられたら、あなたも十分に気をつけていただきたいと思います。
平成19年4月号
メタボリック・シンドローム
「老化現象」にはどのようなものがあるでしょうか。老眼鏡をかけるようになる、物覚えが悪くなる、忘れっぽい、体力が落ちる、肌のつやがなくなる等、いろいろと思い浮かぶことでしょう。実は心臓から全身に送られる血液を流す血管(動脈)にも老化現象があります。それが「動脈硬化」なのです。
動脈の老化現象により、さまざまな病気が引き起こされます。例えば、脳こうそく、脳出血、心筋こうそく等々。人間とて生き物ですから、老化現象は宿命です。これは避けられません。しかし、なるべく動脈の老化を進ませないようにしよう、という注意や努力はきわめて大切なことだと私には思えます。
動脈の老化を進ませる大きな要因で、年齢以外のものがはっきりわかっています。それは肥満、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症などです。したがって、これらをきちんとコントロールすることで、先ほどの恐ろしい病気の発病をある程度は抑えることができるはずです。動脈の老化が原因で引き起こされる病気になりやすい状態をメタボリック・シンドローム(代謝異常症候群)と称し、最近よく耳にするようになりました。
これにはしっかりとした「判定基準」がありまして、内臓脂肪蓄積、脂質代謝異常、高血圧、糖代謝異常の4つが挙げられています。具体的な数値でいいますと、1.腹周囲が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上。2.採血で中性脂肪の数値が150以上(HDLの数値が40未満)。3.上の血圧が130以上、下の血圧が85以上。4.空腹時の血糖値が110以上。1の項目を満たし、かつそれ以外の項目で二つ以上に当てはまれば、当症候群と診断されます。皆さん、いかがですか?外来でチェックされてみてはいかがでしょうか。
最近、日常診療の中で特に強く感じることがあります。それは「動脈硬化のなりやすさは確実に遺伝するのではないか」ということです。たとえば、脳こうそくで入院された方にくわしくお話を聞きますとたいていの場合、ご両親やおじいさま、おばあさま、ご兄弟の中に脳卒中や心筋こうそくの方がいらっしゃるのです。ですから、もしあなたの身内にこのような病気の方がおられた場合には、メタボリック・シンドロームのチェックは特に必要となるでしょう。
近頃はテレビや新聞、本やインターネットなどで簡単に情報を得ることができるようになりました。もしあなたが「メタボリック・シンドローム」に興味を持たれたら、勉強されてみてはいかがでしょうか。
平成19年3月号
めまいについてお話しましょう
めまいの原因を診断する上で、もっとも大切なことはその性質なんです。めまいの性質は大きくわけて3つありまして、順に挙げますと、頭がフッと軽くなってフラフラして気を失いそうになる『立ちくらみ』型のめまい。天井や自分のからだがクルクル回っているように感じる『回転』型のめまい。それからお酒を飲んだ時みたいに身体が揺れるように感じる『動揺』型のめまいです。
では『立ちくらみ』型のめまいの場合は、どういった病気が考えられるのでしょうか? 実は『立ちくらみ』を起こす病気はさまざまあるのですが、その症状の原因はズバリ一時的な脳の血液循環の低下です。俗に言う「脳貧血」ですね。代表格は「起立性低血圧」といいまして、これは例えば急に頭を持ち上げた時に「脳貧血」を起こさせまいとする神経の反応が鈍い時に起こります。成長期の子供さんや自律神経のバランスの悪い方に起こりやすいですね。次に『貧血』。若い女性に多いのが「鉄欠乏性貧血」、中高年であれば胃かいようなどからの出血、高齢の方に多いのが悪性腫瘍(ガン)です。ですから『立ちくらみ』型のめまいの方は、必ず採血をして血液をチェックしなければいけません。また『不整脈』の有無も調べる必要があります。あとは頸動脈や脳血管の異状でも『立ちくらみ』は起こります。まだまだありますヨ。例えば薬の副作用の可能性も。血圧を下げるお薬を飲んでおられる方に時にみられます。
次に『回転』型のめまいです。耳の働きは?と聞かれれば「音を聞くこと。」と小さなお子さんでも答えられます。もちろんこれは正解なんですが、実はもう一つ大切な機能を耳は持っているのです。その機能とは『頭の位置がどうなっているのかを感知するセンサー』の役割なのです。例えば頭の位置が斜めだとか上を向いているとか。ですからあまり無理矢理にくるくる頭を回転させてしまうとそのセンサーに異状を来たして、修正が一時的に効かなくなるために健康な方でも『回転』するめまいが起こると考えられています。ですから『回転』型のめまい発作にはよく「耳鳴り」を伴うことがありますが、これはその原因が耳にあることの証拠になります。代表的な病気には「メニエール氏病」や「良性発作性回転性めまい」などがあります。
最後に『動揺』型のめまいですね。この場合は脳しゅようや脳卒中、薬の副作用などが原因として考えられるため、しっかりと検査をする必要があります。
長く「めまい」が続く際には悩まれずに、外来でお気軽にご相談下さい。当外来ではくわしく問診をとり、必要に応じて採血や頭部CTスキャンなどの検査をおこなって原因を調べていきます。
平成19年2月号
安易な「健康法」に注意してください
もうすでにテレビや新聞のニュースでご存じのことと思いますが、関西のテレビ局が制作した「納豆ダイエット法」の内容が実はインチキであったことがわかり、世間から痛烈な非難を受けて、テレビ局はその責任をとるために番組の打ち切りを決定しました。ニュースでは、なんともお粗末でいい加減な番組制作の過程が暴露されていましたね。僕ら医者は「またか・・」と苦笑していました。
数年前には「ココア」がとても身体によいとある番組の中で取り上げられ、それから全国のスーパーマーケットやコンビニからココアがいっせいに姿を消したことがありました。当時、糖尿病治療を行っていた方が、糖尿病を治すためにココアをたくさん飲み、その結果、逆に血糖が高くなりすぎて病状を悪化させてしまった例があります。「健康」や「ダイエット」についての情報の多さは、そのまま健康に対する世間の関心の高さを物語っているように思われます。この「インチキ納豆ダイエット事件」をきっかけに、今までテレビや雑誌で紹介されてきた数々の健康法にも、その効果について疑いの目が向けられることは間違いないでしょう。何としてでも正しい情報がほしいものですね。
<理想の健康法>とは?
最近、地域の勉強会で講演させていただく機会が多いのですが、どこの会場でも『健康法』についての質問を数多く受けます。ここで理想の健康法について、私なりの考えを述べてみたいと思います。ポイントは3つ。まず一つめ。健康法を選択するにあたって大切なことは、何はさておきしっかりと自分の身体の弱点を知ることです。身体の弱点を補強するための「健康法」であるならば理にかなっていますね。単に「健康になりたい」という願い(これはとても大切なことですが。)からではなく、弱点補強の目的意識をもって行なう健康法を選ぶべきでしょう。もちろん健康のためとはいえ、一応かかりつけの医者に相談してみてください。
2つめ。継続可能な健康法であること。このことはとても大切です。逆に言えば、いくら正しいやり方だとしても継続できそうもない健康法では全く意味がありません。健康法は「ブーム」ではイカンのです。一時的に流行(はや)るだけの健康法はイカサマとは言いませんが、私は信用できない。簡単でもキチンと続けられる、無理のない健康法をぜひともお勧めしたいです。
最後に3つめ。その時々の体調に応じて方法が変えられる「柔軟な健康法」であること。かたくなに信じこんでしまって修正のきかない健康法は時に身体を壊すことがあるのだと知っておいてください。
平成19年1月号
新年明けましておめでとうございます
平成19年、新しい年が始まりました。今年も皆さまの健康を守るべく、気持ちも新たに一生懸命に外来を勤めてまいりますので、旧年同様よろしくお願いいたします。さて、新年を迎えるにあたり、今年の当外来での目標を立てましたので、ここに記させていただきます。いろいろと考えた末、今年の目標は「患者さまにご自分のお体の弱点をしっかりと理解していただく」ことに決定いたしました。外来ではさまざまな検査を行いますが、得られた異常については十分に説明をし、患者さまご本人が今後の治療方針について納得していただくことを心がけたいと思っております。検査結果についてご不明な点は遠慮なくご質問下さい。
肩こりを予防しましょう
最近、肩こりに悩まれている方がとても多いような気がします。肩こりは頭痛の原因にもなりますので、日頃からしっかりと予防することが大切。いろいろな肩こりの予防法がありますが、ここでは効果が確実なものを書いてみます。
肩こり対策・その一 目の疲れを残さないこと
最近、十代、二十代の若い世代の方々に肩こりが増えているようです。恐らくコンピューターやゲーム、受験勉強などで日頃から目を使いすぎているからではないかと思われます。年輩の方では、目のにごり(白内障)や度の合っていないメガネの使用などが原因になることがありますので、十分に気をつけてください。肩こりを持たれている方のほとんどが、目の疲れを合併しています。
肩こり対策・その二 うつむき姿勢は極力避ける
ひどい肩こりに悩まれている患者さまを診察しますと、面白いことに、姿勢がよろしくないことが多いですね。猫背といいますか、生活の折々で長い時間「うつむき姿勢」をとっておられることが多いようです。お年のために背中が曲がってしまわれている方は別にして、新聞を読むとき、食事をするとき、イスに座っているときの皆さまの姿勢はいかがでしょうか?日常生活の中で積極的に背伸びをする習慣を身につけていただきたいものです。また、背の高い枕や表面の固い枕の使用でも肩こりは起こりますので、今ご使用になられている枕をぜひチェックしてみてください。
肩こり対策・その三 肩こりを起こす病気をチェック
肩こりの原因は、なにも目の疲れや姿勢の悪さだけとは限りません。むち打ち症や高血圧などの内科の病気からも起こることがあるのです。あまり簡単に考えずに外来でご相談下さい。
平成18年12月号
脳卒中の徴候を見逃さないために
先月号では、日本脳卒中協会が提唱した「脳卒中予防十か条」をご紹介いたしました。それでは今回は、脳卒中を疑う代表的な症状についてお教えいたしましょう。脳卒中の治療は時間との勝負です。できれば発病から3時間以内、遅くとも6時間以内には治療を開始しなければいけません。ですから、以下にお示しする症状があなた自身、あるいはご家族にみられたら、直ちに救急病院を受診する必要があるとお考えください。とても大切な内容ですので、しっかりとお読みくださいね。
警告症状 その一 突然おこる原因不明の激しい頭痛
くも膜下出血を発症された患者さんに詳しくお話を聞きますと、はじめに出た症状は「いきなりバットで殴られたような激しい頭痛」だったそうです。あまりの痛みに思わずその場にしゃがみ込んでしまったとのことでした。
警告症状 その二 突然半身がしびれたり、力が抜けたりする
この症状は「半身」というところが大切です。つまり症状がおこるのは「右半身」か「左半身」かということですね。しびれの性質としては、正座で足がしびれた時のように、ジンジン・ビリビリすることが多いようです。それが半身に出るわけですね。力が抜ける場合は、歩きにくい、食事のときにお箸や茶わんが持ちにくい、といったことで気づかれるようです。
警告症状 その三 しゃべりづらい、言葉が理解できない
急に呂律(ろれつ)が回らなくなる、あるいは思うように言葉が口から出てこない、耳から聞こえる言葉が理解できない。このような場合も脳卒中を疑います。脳卒中は何も麻痺(まひ)や頭痛で気づくというわけではありません。
警告症状 その四 突然目が見えなくなる、ぼやけて見える(とくに片目)
突然目の前が真っ暗になり、それがしばらく続く症状を「黒内障(こくないしょう)」と呼びます。もちろんこれは眼科の病気でも起こりえるわけですが、原因が目であれ脳であれ、血管の中の血のめぐりが悪くなっていると考えられます。ただちに検査・治療を要することが多いので気をつけてください。
警告症状 その五 突然めまい(ふらつき)が他の症状に伴なって起こる
耳鼻科の病気で「メニエール氏病」がありますが、脳卒中でも非常に似た症状を起こすことがあります。すでに耳鼻科から診断されている場合は別として、めまいをあまり簡単に考えずにすぐに検査を受けていただきたいと思います。
以上、早期に脳卒中を見つけるための症状を述べました。とにかくからだの様子がいつもと違うときにはお気をつけください。
平成18年11月号
脳卒中予防十か条
朝晩の冷え込みが厳しくなりつつあります。いよいよ冬も近いのかな、と感じる季節になりました。やっかいな病気の代表選手ともいえる脳卒中の出番はこれからが本番なのです。ご存知のように脳卒中とは、脳の血管が破れたり、つまったりして起こる病気です。身体にさまざまな後遺症(マヒ・シビレ・意識障害など)を残し、生活能力を著しく損なわせる怖い病気だといえるでしょう。今月は過去に日本脳卒中協会が発表した「脳卒中予防十か条」をご紹介したいと思います。この十か条をしっかり理解して、脳卒中の発病、再発をなんとしてでも予防してまいりましょう。
その一 手始めに 高血圧から 治しましょう
高血圧は脳卒中の原因の代表格です。日頃からきちんとご自分の血圧の管理を行ってください。数値としては140/90以下を目標にしましょう。血圧は特に変動に注意が必要です。あまりに感情的になったり、ストレスでイライラしたり、便秘をしたり、寒さにふるえたりすることは血圧管理の面でよいことではありません。
その二 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
糖尿病は全身の血管をじわじわとむしばんでいきます。したがって、脳のみならず、心臓や腎臓、足の血管をもぼろぼろにしていくのです。最初は全く自覚症状がないために見落とされがちですので気をつけましょう。外来での採血でハッキリ診断がつきます。血糖のコントロールは厳密に行いましょう。
その三 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
不整脈の中には、脳卒中の引き金となるものがあります。その代表が「心房細動」と呼ばれるものです。心臓の中で血の固まりを生じやすくなり、それが脳に流れていって血管を詰めるのです。(脳塞栓:のうそくせん)不整脈の管理については外来で相談をなさってください。
その四 予防には タバコを止める 意志を持て
タバコの害については、改めてここで強調する必要はないですね。最近ではタバコの煙を周りの人が吸ってしまう状況が問題となっています。(受動喫煙)
その五 アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
お酒の害は何も肝臓に対してだけではありません。実はくも膜下出血を起こされた方には「大酒のみ」が多いことが知られています。あなたは大丈夫ですか?
その六 高すぎる コレステロールも 見逃すな
高コレステロール血症は、高血圧や糖尿病と共に動脈硬化(血管の老化)を早く進める要因となります。コレステロールの数値は高くても低くても要注意ですので、担当医によく説明をしてもらってください。
その七 お食事の 塩分・脂肪 控えめに
薬だけで脳卒中を予防することは困難です。昔から「医食同源」と言われるように、日頃の食事内容には十分な気配りが大切ですね。ご自分の体質を十分理解した上で、ぜひ栄養士と相談をしていただければと思います。
その八 体力に 合った運動 続けよう
運動が健康によいということは言うまでもありません。しかし、身体の個性や体調を無視した運動はかえって逆効果となります。自分に合った運動を心がけてください。一般的には水中歩行や早歩きが推奨されているようです。
その九 万病の 引き金になる 太りすぎ
これは説明を必要としませんね。食事と運動で良好な体重を維持しましょう。肥満の指標としては、BMI( Body Mass Index )がよく用いられます。これは体重(kg)を身長(m)×身長(m)で割るのです。例えば、身長160センチで体重70キロの方であれば、BMI=70/1.6x1.6ですね。この数値が25以上を肥満としています。
その十 脳卒中 おきたらすぐに 病院へ
脳卒中の治療は時間との勝負です。半身のシビレやマヒ、言葉がうまく言えない、突然の激しい頭痛があれば、夜中であっても直ちに病院に受診を。発病から6時間以内、できれば3時間以内の治療が求められます。
平成18年10月号
高血圧の方が増えています
先日、当外来を受診されている患者様にどのくらい高血圧の方がいらっしゃるのかを調べてみました。そうしますと驚くことに、5人中4人の方が血圧を下げるお薬を飲まれていたことがわかったのです。
日本高血圧学会は一昨年に高血圧の治療方針(「高血圧治療ガイドライン」と呼ばれています。)を発表しましたが、その中で高血圧は脳卒中(脳の血管がつまったり、破れたりする病気)の発病と特に強い関連があることがハッキリと述べられていました。このことから、日頃から血圧をきちんと管理することが脳卒中の予防につながるということがわかります。
高血圧は生まれつきの要因(体質)と生活環境が影響するといわれています。体質は仕方がないとして、血圧をきちんと管理するためにはどのような生活を送るべきなのでしょうか? 先ほどのガイドラインに沿って書いてみましょう。
1 塩分をとりすぎない(できれば一日6グラム以下) 2 野菜やくだものをしっかり食べる(ただし、糖尿病や腎臓病の場合は主治医と相談)3 太りすぎない 4 毎日の適度な運動を心がける(例えば、早歩きを一日30分以上。心臓の機能がしっかりしていることが条件になります。)5 お酒の量をひかえる 6 タバコはほどほどに 以上の6項目です。そうそう、昔の方はトイレと風呂場で脳卒中が多いことをよく知っていました。便秘の治療や身体を冷やさない工夫も血圧の管理につながりそうですね。さて、ご自分に当てはめていかがだったでしょうか?
先ほどのガイドラインでは高血圧を細かく分類していますが(ここでは省略いたします。)、当外来では正常血圧を130/85未満と考え、高血圧の方の目標血圧を140/90未満にしたいと考えています。
日本人の死因の第一位はガンですが、脳卒中も年々少しずつではありますが増えてきているようです。薬を飲みさえすれば大丈夫、と安心はできません。血管の老化(動脈硬化)を早く進ませないように、日頃からしっかりと対策を立てておかねばなりません。高血圧のみならず、肥満、糖尿病、高コレステロール血症は血管の老化を異常に早く進行させます。「自分の血管を自分の力でしっかりと守る」ことを目標にがんばってみませんか。
最近、ご家庭で血圧を測定される方が多くなりました。私は特に朝の血圧を重視しておりますが、これには条件があるのです。血圧測定は朝起きてから一時間以内に、トイレを済ませたあとで食事の前が原則。座ってゆったりした状態ではかってください。
平成18年9月号
貧血に気をつけましょう
私たちが元気に生きていくために大切な成分は実に数多くありますが、特に空気中の栄養分ともいえる「酸素(さんそ)」の働きは重要です。逆に言うと、酸素なしでは絶対に生きていけないということですね。この酸素を身体のすみずみまで運んでくれるのが血管の中を流れる「赤血球(せっけっきゅう)」という成分なのです。この赤血球の数や、その赤血球の中で酸素を運ぶ役割をしている成分(ヘモグロビン)が減ると、十分な酸素を身体のすみずみにもたらせなくなりますが、この状態を「貧血」というのです。私の外来に通院されている方々の中にもよく見受けます。
この貧血が進むといろいろな症状が出てきます。まったく症状のない方も時にはおられますが、代表的な症状としては、めまい・立ちくらみ、頭が重い、頭痛、耳鳴り、顔色が悪い、動悸・ 息切れ、疲れやすい、体がだるいなどが挙げられます。貧血が見つかれば当然治療をするわけですが、その治療法は貧血をおこす原因によってさまざまです。内科外来でよく見つかる貧血の原因は、お若い方であれば鉄分不足(鉄分は健康な赤血球をつくるために必要となるものです。)、お年の方であれば胃かいようといったところでしょうか。他にも貧血の原因はたくさんありまして、やっかいな病気である膠原(こうげん)病や薬の副作用、果ては悪性の病気まで、その種類は実にさまざまです。
さて、外来ではいとも簡単に貧血を見つけることができるのをご存じですか?平素より定期的におこなっている検査の一つに採血がありますが、これですぐに結果が出るのですね。もし貧血があれば、今度はその原因について調べていかなくてはなりません。治療はその原因次第ということになります。最近、食事療法についての関心が高まってきていますが、実は貧血を予防するための食事のコツをお話しすることは大変に難しいのです。なぜなら肉、魚介類、海草類、野菜、果物、これらのどれもが身体にとって貧血の予防に必要だからです。ですから「好き嫌いのないバランスのとれた食事を日頃から心がける」ことが一番のポイントだと言えますね。当たり前のこととはいえ、不思議と難しく感じてしまいます。
かぜを予防しましょう
暑さの厳しかった夏が過ぎ、いよいよ秋を迎えようとしています。かぜは万病のもとです。しっかりと予防しましょう。私は緑茶のうがいを勧めています。人肌くらいの生ぬるい温度の緑茶で一日に何度もうがいしてみてください。
平成18年8月号
骨を鍛えましょう
健康ブームが流行しだした頃から「骨そしょう症」に対する関心は非常に高まってきています。高齢化社会という言葉は若干聞き飽きた感もありますが、骨折をきっかけに寝たきりになるお年寄りの方が大勢いらっしゃる現状を考えますと、日頃から骨を鍛える習慣をつけておくことはとても大切だといえるでしょう。もちろん医者から処方された薬を飲むことも骨を守る一つの方法ではありますが、それ以外にも骨を鍛えるポイントがありますので、ここに3つお示ししましょう。
(その一)カルシウムを多く含む食べ物をとること
カルシウムを多く含む食べ物をお教えします。代表的なものに、干しエビ、煮干し、ひじき、ごま、チーズ、切り干し大根、しらす干し、ヨーグルト、牛乳などがあります。当然のことながら、バランスのよい食事を心がけましょう。
(その二)日光浴をすること
適度に日光を浴びますと、体の中でビタミンDが合成されます。この物質は腸からのカルシウム吸収を高めます。そうそう。日光浴が骨にいいから、といって日に当たりすぎて日焼けをしないようにしてくださいね。節度が大切。
(その三)骨に適度なストレスをかけること
寝たきり状態は骨をもろくすることが知られています。したがって、日頃から骨にある程度の重みをかけておくことが、骨の強度を保つ上で大切です。そういえば、宇宙飛行士は重力のない(重みのかからない)宇宙空間で骨が弱くなります。一般的には「歩く」ことが勧められていますが、せめて「座る」「立つ」習慣を身につけておくことが肝要でしょう。そうすることによって、背骨や足の骨には適当な重みがかかります。多くの病院では「骨そしょう症」の程度を知ることができる検査があります。あなたはご自分の「骨年齢」を確かめてみてはいかがでしょう。
検査を受けましょう
自分の身体の弱点を知ることが、正しい療養につながります。採血や検尿、胸部レントゲンは当外来でも定期的に実施いたしますが、それ以外にも胃カメラや腹部超音波も極めて大切な検査です。今、症状がないからこそしっかり調べておくのだ、という考え方も大切です。いずれも簡単に実施できる検査ですので、気軽にお申し出ください。
平成18年7月号
口の中をきれいに保ちましょう
「誤嚥(ごえん)」という言葉をご存じですか? 口からはいった食べ物や、鼻や口からはいった空気は、のどのところまでは同じところを通るのですが、そこから先は食道(しょくどう)と呼ばれる胃に通じる管と、気管(きかん)と呼ばれる肺に通じる管とに分かれます。当然、食べ物は胃に、空気は肺に送られなければいけないのですが、本来は胃の中に落ちていくべきものが、誤って気管にはいってしまう状況を誤嚥というのです。つまり唾液、水、ご飯などを間違えて気管にいれてしまうことです。
通常、水やご飯粒などが気管に入りますと、激しくむせてそれらをはき出すことができますから問題はありません。ところが最近、寝ている間に口の中にたまった唾液を誤嚥して肺炎を起こすケースが増えていることがわかっています。しかも、病気を持っていない健康な人でさえ、このような誤嚥を起こすことがあるのですね。通常は体の抵抗力や、気管粘膜の作用で何とか肺炎にならずに済みますが、高齢の方や脳卒中を起こされた方などは容易に肺炎になってしまうようです。(このような肺炎を誤嚥性肺炎といいます。)ですから、口の中を常に清潔にしておくと肺炎予防になるというわけですね。
最近、外来の診察で患者様の口の中を見てみますと、食べかすが残っていたり、口のにおいが強かったりという方が少なからずおられます。これからは健康作りの基本の一つとして、口の中を常にきれいにされてみてはどうでしょうか?