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診察室 第2回 頭が痛い!


 我々はどんな時にでも、受診に来られる患者さんの症状を緊急性がある病気なのか、あるいはないものなのかということを常に考えます。言い換えると、放っておけば命に関わるものか否かということを問診と診察とによって鑑別するわけですね。

 今回のテ−マであります頭痛は日常的にありふれた症状であるばかりでなく、命に関わるものから放っておいても治るものまでさまざまあり、実にバラエティ−に富んでいます。ハッキリ言うと頭痛というのはそれゆえに難しく、医者泣かせの症状の一つであると思っています。

 さて、このテ−マだけでも1冊の本になってしまうほど奥の深い頭痛のことをお話するにあたって、それが緊急性のある、つまり放ってはおけない病気から来るものか否かを見分けるためのポイントをお示ししようと思います。

1)頭痛のおこり方   今、あなたが感じている頭痛は突然起こったものでしょうか、それとも以前からお持ちの症状でしょうか? 言うまでもなく突然起こった激しい頭痛の中には注意を要するものが多いのです。我々が一番気を付けるものが脳出血、つまり 頭の中の血管がある原因によって破れて出血するもの。場合によっては緊急手術で頭蓋骨の中の血の固まりを除去しなければなりません。たいていの場合、頭痛以外の症状(例えば、意識がおかしかったり、手足がしびれたり、おう吐したり、など。)を伴います。私が出会ったある脳出血の方は、今まで経験したことのない激しい痛み、あるいはハンマ−で殴られたような痛み、と表現されていました。あと他には、高熱が出て、頭痛薬が効かないガンガンする頭痛であれば髄膜炎を疑いますし、意外に思われるでしょうけれど、目の病気、緑内障からも頭痛は起きます。突然の吐き気、おう吐を伴う激しい頭痛の中には少なからず緑内障が見受けられます。これは眼球(めん玉)の内圧が高くなってしまうもので、場合によっては失明することもあります。

2)頭痛の経過   今、あなたが感じている頭痛は起こり始めからどのような経過をたどっていますか? 気をつけるべきものは、次第に頭痛が強くなるものですね。短期間にどんどんと悪くなるものには圧倒的に脳出血が多い。また、時間をかけて悪くなるものでは脳腫瘍も疑います。これらの場合、随伴する症状も大切。吐き気はないですか? 手足がしびれたり、力が落ちていませんか? 悪化する頭痛の場合、頭部 CT スキャンは必須の検査です。

 このようにまとめてみると、命に関わる頭痛かどうかというのは、その起こり方と経過にあるようです。ここのところをよく理解しておいて下さい。さて、救急病院(救急外来)ではなく一般外来の診察室でよくお見受けする頭痛はほとんどが次の2つです。それらは共に頭蓋骨の外側に原因を持つもので、症状の強さにかかわらず命にかかわることはありません。

筋緊張性頭痛

 ある統計によると、頭痛を訴えられる患者さんの半数がこの頭痛だそうです。これは、頭の表面、首、肩、背中の筋肉の持続する緊張によって頭痛が来るものです。 患者さんの症状としては、頭におもりがのっかっている(頭重感)、頭がはちまきでしめられるようだ、肩凝りがひどい、といったものがあります。頭ってそれと同じくらいの大きさのスイカの重さがあります。首や背中の筋肉は四六時中その重さを支えているわけですね。だから姿勢が悪いと起きやすい。(特に最近パソコン作業に伴うことが多い。目の疲れもよく合併しています。あ、そうそう、度の合っていないメガネをかけても起こりますね。)だから寝る際に枕が高くても起きますよ。ご注意を。最近では精神的なストレスもよく原因になるようです。

 治療として私が外来で指導するのは次の2つ。1つは生活指導。まず、目にやさしい生活を。人間だって元は野生の動物だから、遠くを見るために(外敵から身を守るため、獲物を捕まえるために)目はできているはずです。だから、なるべく仕事の合間に目を休めて遠くを眺めましょう。次に後ろ首、肩の筋肉の緊張をやわらげましょう。両指を組んで、背伸びをして下さい。グ−ッと背伸びしたまま数秒静止して下さい。そのときは腹式呼吸ですよ。おへそのちょっと下のところに吸い込んだ息をためる感じで。我々は疲れた時によく背伸びをしますよね。あれは、体が首や肩の筋肉の筋肉の緊張をほぐす方法を知っているためです。無意識にやってしまうんですね。だから、日頃から先ほどの背伸び法をクセにしておけばこの頭痛は予防出来ます。2つめにはシップ療法。(シップにかぶれやすければ塗り薬も可。)消炎鎮痛の外用薬をお風呂上がり、寝る前に首の真後ろに貼ること。はがれても構わないから、これをとにかく毎日続けて下さい。日中は必要ありません。夜、風呂上がりで寝る前に調子が良くても悪くても必ず毎日シップを首の真後ろに貼って下さい。(冷シップの方が効果があるようです。)これを2週間から4週間も続ければ、頭はとてもすっきりするし、ほとんどの患者さんが長年の頭痛から解放されています。強調しておきたいのですが、姿勢はとても大切ですよ。私は外来で患者さんの左右の肩の高さを比較しています。このタイプの頭痛の患者さんの中には時たま左右の肩の高さの違う方を見かけます。筋肉の緊張のバランスが崩れているんですね。

片頭痛

 頭痛の患者さんの約2割を占めている病気です。これは血管からくる頭痛で、心臓の鼓動に合わせてガンガン、ズキズキとする痛み(拍動痛)が特徴です。発作性反復性にみられ頭のどちらか一方側に出現します。原因は頭の表面を走る血管が拡がる(拡張する、と表現します。)ためにおこるもので、ストレス、食事(ワイン、チーズ、チョコレート、ヨーグルト、レバー、ベーコンなど。)が時に誘因になるようです。その痛みは軽いことはあまりなく、患者さんは大変な苦痛を強いられますのできちんと治療を行わなくてはなりません。

 どの病気にも共通していますが、治療には2つの方法があると言われています。一つは対症療法。つまり症状を取り去る治療のこと。歯が痛い時には鎮痛剤、熱があれば解熱剤、といったような治療のことです。もう一つは原因療法。これはその症状を引き起こしている原因となっている病気を治療するものです。虫歯で歯が痛いのならば虫歯の治療、肺炎で熱が高いのであれば肺炎の治療を、という治療ですね。外来でいつも気になるのは、慢性の頭痛の患者さんのその大部分が対症療法、つまり痛み止めだけで長く過ごされていること。原因はそのまま放ったっきりですから、頭痛はいつまでも良くならず、長く薬を服用しているわけです。もちろんそれはそれで大切な治療ですが、原因療法はもっと重要です。自己判断せずに、よく担当の医者と相談し、的確なアドバイスを受けて治療を行って下さい。

 どうでしょうか? 頭痛について少しでもあわかりいただけたでしょうか? それでは次回にまたお会いいたしましょう。お大事に。


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