[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック



診察室 第3回 身体がだるい!


 内科の外来を受診される身体を病まれた患者さんの訴えの中で『身体がだるい』という症状は数ある症状の中でもランキング上位を占めるものであります。

 健康な人でも仕事でクタクタになった時や遊びすぎたりはしゃぎ過ぎてしまったりした時、気苦労が重なり緊張状態が長く続いたりすれば当然私たちは『だるさ』を覚えます。しかし皆さんおわかりのようにこの『だるさ』は明らかに病的なものではありません。なぜなら肉体面、精神面での休息により必ず回復するからです。

 したがって、身に覚えのない『だるさ』や休息によっても回復しない『だるさ』は明らかに病的であり、診察のうえ治療が必要となります。今回の診察室ではこのありふれた症状の一つである『だるさ』についてお話してみようと思います。詳しくお話すると非常にわかりにくくなってしまいますので、よく遭遇する病気について触れてみましょう。

 病気一般について言えることですが、まず何が原因となってその症状が引き起こされているのかがわからなければ適切な治療は出来ません。もしあなたが身体のだるさを訴えたとして病院を受診しますと、まず最初にされることは体温と血圧の測定でしょう。実はこれが非常に大切なのです。発熱は『だるさ』の原因になり得るし、血圧の変動(ことに低血圧)もだるさのきっかけになることもあります。日頃外来で熱の高い患者さんによくお話を聞いてみると、ほとんどの方が身体のだるさを訴えられておられます。この場合、発熱そのものの影響か、あるいは食欲低下のために脱水症(身体に必要な水分が欠乏している状態。)になっていることがよくあります。たかが検温、されど検温。

 もし熱が高ければその原因を突き止めなくてはなりません。その熱が急に起こって来たのか、あるいは慢性に長くダラダラと続いているのか、ということだけでも考えられる病気の種類がちがってくるので鑑別が大変です。まだかけ出しの医者の頃、僕は教科書片手に外来をやっていました。それほどありふれた症状の奥に潜む病態は複雑なんですよ。さて、熱が原因でだるい場合はたいていの場合が感冒症候群(俗に言うカゼ。)がほとんど。この場合は熱の他の症状が大切。例えば鼻水とか咳とか。ノドの症状が強ければ咽頭炎や扁桃炎かな? 脱水症で多いのは急性胃腸炎。下痢が長く続くと水分がどんどん外に出ちゃうので脱水症はほぼ必発。その時は点滴を受けて元気を取り戻しましょう。

 やっかいな病気としては、結核、癌、膠原(こうげん)病などがありますが、カゼっぽくない発熱の患者さんにはどっさりと検査が待っております。 

 では次に発熱がなくて身体がだるい場合です。

 診察室で担当の医者はあなたに尋ねるでしょう。立ちくらみがないかどうか、食欲はどうか、下血(げけつ。便に血が混ざること。この場合、便がノリのつくだにのように真っ黒になる場合(タール便)と真っ赤な鮮血が混ざる場合とがあります。)の有無、女性の場合には生理の出血が多くないかどうか。そして肺や心臓や肝臓を患ったことがないか。

 もうおわかりかもしれませんね。そう、まずは貧血(ひんけつ)を疑っているのです。貧血とは血液が薄くなる状態をいいますが、案外貧血で身体のだるさを訴える患者さんは多いのです。特に若い女性。そしてお年寄り。採血をすれば直ちに診断はつきますが、原因によって治療法はさまざまであり貧血の治療って結構難しいものなんです。あとは心不全(心臓の調子が悪くなったいるために身体がきつい。)喘息(ぜんそく)や肺気腫(はいきしゅ。肺が硬くなって呼吸が苦しくなる状態。)などの呼吸器疾患、肝臓病(ことに肝硬変。)の患者さんもよく外来で『だるい』と訴えられています。これらの病気も診察、レントゲン検査、採血で簡単にわかります。診断がつけば、ただちに治療を開始することになるでしょう。

 そうですねえ。あとはホルモン病、特に外来でよく見かけるのは甲状腺(こうじょうせん)の病気でしょうか。甲状腺は首の前の方にあるホルモン器官ですが、この機能が活発になりすぎても元気をなくしても身体はだるくなります。活発な時が『甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病とも呼ばれます。)』でその逆が『甲状腺機能低下症』です。機能亢進の時には、俗に言われるのが眼球突出、わかりやすく言いますと両方の眼が少し飛び出しているように見えること。同時に眼がキラキラしてきます。(本当ですよ。)他には動悸や発汗、イライラや下痢といった症状があり身体全体の活動性がアップしてしまいます。機能低下になりますと、皮膚は乾燥してカサカサ、声もガラガラ。動作は鈍く、全身が腫れぼったい感じ。便秘や抜け毛などが起こり身体の活動性がダウンします。若い女性には亢進症が多く、お年寄りには低下症が多く見られます。どちらも女性が多いような印象を受けます。ホルモン病は採血により確定できますので、診断には一部の病気を除いてはあまり悩むことはありません。すぐに治療を開始します。

 それでは、体温も血圧もよいし、カゼでもなく悪性の病気でもない、ホルモンの異状もなければ何もない。なのに身体は『だるい』。外来にはそういう方もよくいらっしゃいます。

 その時には、不眠の有無、他のストレスの有無をお聞きします。そう、精神的なもの(気持ちの問題によるもの)を疑っているのです。最近では不景気のためか仕事や家庭での悩みや対人関係でのトラブルなどが急増しています。時にはうつ状態にまで追い詰められている患者さんもいらっしゃいます。時間を裂いて極力カウンセリングを行なうようにしていますが、なかなか難しいですね。環境を変えるか、患者さん御本人が変わるかしなければ治らないのです。そのために治療はとても大変です。薬をお渡しさえすればいいというもんじゃないですからね。

 だるいという症状一つとってもいろいろなお話ができるのです。軽い病気から重大な病気にいたるまで、その症状の背後にはさまざまなものが潜み得ます。気のせいだと思い込む前におかしいと気付いたら病院に行って相談をして下さい。

 えっ、この文章を読んでいてだるくなったですって? それは誠に申し訳ない!


看護キャップ