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診察室 第5回 目まいがする!


 前回のテーマに引き続いて今回も「目」が主役です。今回このコーナーでは、内科外来でよく遭遇する『めまい』についてお話ししたいと思います。さて、「目の疲れ」と「めまい」発作では同じ目の症状でありながらその内容は大きく違います。前者は「眼科」が主に守備範囲としているのに対して、後者は意外なことに「耳鼻科」が主役となることが多いのです。では内科に受診される「めまい」の患者さんについて内科医の立場からお話してみましょう。

 めまいを訴えて外来に来られた患者さんを診断する上でもっとも大切なのはそのめまいの性質なんです。大きく2つに分かれるのですが、1つは頭がフッと軽くなってフラフラしてしまう『立ちくらみ』型のめまい、そしてもう1つは、天井や自分のからだがクルクル回っているように感じる『回転』型のめまいです。まず診断の第一歩はこの問診から始まります。というのもこの2つのタイプのめまいは全く違う場所が原因になっており、ここを見誤ると見当違いの治療を行なってしまうことになるからです。ですから、あなたが「めまい」を自覚された場合このどちらのタイプかを医者に教えなければなりません。

 では『立ちくらみ』型のめまいの場合はどういった病気(病態)が考えられるのでしょうか? 実は『立ちくらみ』を起こす病気はさまざまあるのですが、その症状の原因はズバリ一時的な脳の血液循環の低下です。俗に言う「脳貧血」ですね。外来で診る『立ちくらみ』型の最も多い原因は「起立性低血圧」といいまして、これは例えば急にガバッと起き上がったり、イスから立ち上がったり、ひょいと背筋を伸ばしたり、頭を持ち上げた時に「脳貧血」を起こさせまいとする血圧の上昇の反応が鈍い時に起こります。成長期の子供さんや自律神経のバランスの悪い方に起こりやすいですね。(血圧の調整は自律神経の役目ですから。)この場合、からだの個性に応じたアドバイスや治療を行ないます。生活指導(急に頭を上げない。水分を多めに摂る、など。)や低血圧傾向の著しい方には昇圧剤(血圧を高めるくすりです。)を処方します。このタイプのめまいはたいていの場合それほど大きな問題にはならないのですが、時々治療が必要な病気が隠れていることがあります。ここを絶対に見逃してはイケナイのです。

 まず『貧血』。これは文字通り「血液が貧しい」、つまり血が足りなくて薄い状態をいいます。若い女性に多いのが「鉄欠乏性貧血」、中高年であれば胃かいようなどからの出血、高齢の方に多いのが悪性腫瘍(ガン)です。ですから『立ちくらみ』型のめまいの方は、必ず採血をして血液の濃さをチェックしなければいけません。次に『不整脈』の有無も調べる必要があります。不整脈にはさまざまなパターンがあるんですが、中には脈が長い時間「飛ぶ」不整脈があります。例えば5秒とか。そうなるとその間には心臓は休んでいますので脳に血液を送りません。その結果脳貧血を起こしてしまい、ひどい時には意識を失います。あとはホルモンの異常、頸動脈や脳血管の異状でも『立ちくらみ』は起こります。まだまだありますヨ。例えば薬の副作用の可能性も考えられますね。『立ちくらみ』一つとってもこれだけの病気を鑑別しなきゃなりません。ですから僕は『立ちくらみ』の患者さんには大変に神経を使うのです。ホントにこっちがめまいを起こしそう......。(でもこれが仕事ですので頑張りマス。)

 次に『回転』型のめまいですね。あなたに次のような経験はないでしょうか? 幼い頃、目をつむったままわざと自分でクルクル回ってパッと目を開けると周囲の風景が流れて見えたり、自分がフワフワ揺れて感じたり。じつは『回転』型めまいとこの現象は大いに関係があるんです。

 耳の働きは何ですか? と聞かれれば「音を聞くこと。」と小さなお子さんでも答えられます。もちろんこれは正解なんですが、実はもう一つ大切な大切な機能を耳は持っているのです。その機能とは『重力に対して頭の位置がどうなっているのかを感知するセンサー』の役割なのです。例えば頭の位置が斜めだとか上を向いているとか.....。ですからあまり無理矢理にくるくる頭を回転させてしまうとそのセンサーに異状を来たして、修正が一時的に効かなくなるために『回転』するめまいが起こると考えられています。ですから『回転』型のめまい発作はよく「耳鳴り」を伴うことがありますが、これはその原因が耳にあることの証拠になります。

 代表的な病気には「メニエール氏病」や「良性発作性回転性めまい」がありますが、まずは耳鼻咽喉科で「耳機能」をきちんと検査する必要があります。難聴はないか、眼球の「ケイレン」が起こっていないかどうかなどですネ。ですから僕は『回転』型のめまいの患者さんに対しては、応急処置の後に必ず耳鼻科受診を勧めています。逆に耳鼻科の先生から「この方は回転性のめまいをお持ちですが耳の機能は正常です。耳鼻科の病気は考えられません。」と紹介された場合に、いよいよ我々内科の出番なのです。経験的に大きく2つの原因に分かれそうです。1つは「脳の病気」例えば脳腫瘍や脳血管の異状。もう1つは精神的なもの。例えば疲労やヒステリーなど。頭部のCTを撮影したり、詳細な問診をとるなどして鑑別していきます。案外、軽い安定剤の使用だけでめまいが良くなっている方も多いのものですよ。

 めまいはその症状のつらさから重症な病気を考えがちなのですが、実際に診療の場で命に関わる病気が発見されたケースは非常に稀です。ですからあまり恐がらずに病院の門を叩いてください。『立ちくらみ』型のめまいであれば内科、『回転』型のめまいであれば耳鼻科の受診をお勧めします。ではまた次回に。


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