末永 昭二 氏
末永氏とは中学校以来の付き合いです。つい最近まで僕にとっては職業不詳の謎の多い人でしたが、このたび本を出版するにあたりようやく彼の正体(本業)が判明したのでありました。
大衆小説研究家の彼が世に送りだした本は『貸本(かしほん)小説』といいます。レンタルビデオ屋さんにナゾっていうならば、レンタルブック屋さんといったところでしょうか。昭和30年代、日本には現在のコンビニエンスストアの数に匹敵するほどの数の貸本屋があったそうです。高度成長期とはいえ娯楽に飢えていた当時の大衆の渇きを癒すものの一つがこの貸本小説や貸マンガなのでした。
本書は貸本小説にスポットを当てて、ジャンル別、作家別に独自の解釈を通して我々にわかりやすく紹介してくれています。まえがきにあるように、現在の大衆文化にはこの頃の『読み物で培われたさまざまな「技術」が今も息づいている』のです。
氏はあとがきに次のように記しております。『誰にも省みられず、ポッカリと忘れ去られていた貸本小説に、一人でも多くの人が興味を持つようになれば、筆者としてそれ以上の幸せはありません。』と。ともすれば歴史の中に埋もれて忘れ去られてしまうであろうジャンルに敢えてスポットを当てると同時に、当時の関係者に対しての尊敬を決して忘れない筆者の想いが伝わってくるようです。
この本に対しては次の3つの読み方ができると思います。1つには一種のノスタルジアというか、過ぎ去りし時代に思いを馳せつつ当時の大衆の生活習慣や流行などを行間に感じてみること。僕はそんな観点から本書を読ませてもらいました。2つ目には現在もう見ることのできない貸本業界の当時の事情を検証してみること。これは面白そうですネ。氏の次回作がこのあたりを詳説するものだったらいいなあ。3つ目には、貸本小説を執筆した当時の作家の作風を研究してみること。これはれっきとした学問ですね。
ぜひあなたも一読してみて下さい。本当に興味深く読める本です。
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