田中 智史 君
僕の外来を受診した18歳の若者を紹介します。名を田中 智史(ともふみ)君といいます。彼は幼少の頃に発症した『進行性筋ジストロフィー症』という難病と向き合う日々を過ごしている青年です。
先日、彼はお母さんと一緒に僕の外来を訪れました。リハビリテーションを実施する上で必要な身体の評価を目的とした診察を行なったのです。智史君はちょっとはにかんだ笑顔がとても印象的な好青年、そしてお母さんは明るく、前向きで優しい方でした。「この難病を必ずや克服するんだ」という親子二人三脚の姿に僕は「微笑ましさ」と「気迫」そして「誇り」とを同時に感じたのでした。特にお母さんがおっしゃった次の言葉が忘れられません。『いつか必ずこの病気の特効薬ができると信じています。そして私たちはこの病気のことを世間に隠しません。むしろ多くの方に知ってもらいたいと思っているのです。』 このように話されるお顔に闘病生活のつらさは全く感じられませんでした。
さて、智史君が自作のCDを製作していたことがわかったのは診察が終わってからです。僕は大変興味があったので、申し訳ないと思いつつお母さんに無理を言わせてもらいCDを手元に届けていただきました。『愛』というタイトルのついたそのCDは智史君のレコ−ディング風景の写真が表紙に用いられています。

智史君本人の「言葉」が表紙の裏面に掲載されています。『ぼくはみんなのことが しりたい / ぼくのことをしってもらいたい (後略)』 これはきっと彼の心の奥底から自然に出た真実の言葉ですね。その延長線上にあると思われる詩(歌)が彼自身の声により語られています。
『恋』「 恋だって努力すれば うまくいく / 僕らはそう思うよ / 君を守り続けたいよ ずっと ......(後略) 」
『未来に向かって』「(前略) 君にまだ 好きと言えない / 君をずっと 守っていけるのかな.......(後略)」
(智史君、君は真剣な恋をしておるな。心から好きな人がおるな。よし、診断書には『恋の病(やまい)』と書いてあげよう!)
ぜひあなたも彼の声を聞いてみてください。僕らにはない何かを智史君の感性が語りかけてくれます。このCDに興味がおありになる方は源じい宛にメールをください。お問い合わせ先をお教えします。
残念ながら田中智史君は平成14年10月2日に亡くなりました。彼の最期の顔はとても安らかだったそうです。若くしてこの世を去らねばならなかった智史君のご冥福を心からお祈りいたします。